人気ブログランキング |

【徒然なるままに・・・】

odin2099.exblog.jp

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『麦屋町昼下がり』 藤沢周平

e0033570_145736.jpg舅に襲われていた若妻を救い、斬り捨ててしまった男。しかしその女性には不義密通の噂があり、もし舅がそれを咎めていたのだとすると、男の立場は一変してしまう。そこへ藩随一の遣い手とされる女性の夫が国許へと戻り、父の敵として狙っているという噂が立ち、男はそれに立ち向かうために”不敗の剣”を学ぶ、というのが表題作「麦屋町昼下がり」

他には若かりし頃には将来を嘱望されていたものの、お役目での失態から左遷されうだつの上がらない生活を送っていた男が、藩内の権力争いに巻き込まれてしまう「三ノ丸広場下城どき」、先代藩主の不審死の謎を秘めたまま自死した友人の遺書から、かつて自分の家禄を減らされることになった事件との繋がりに気付いた男が、真相究明に乗り出すという「山姥橋夜五ツ」、家老の急死により、それぞれの夫が後任争いに巻き込まれてしまったかつての親友同士だった女性。絶対に負けられないという思いを抱きながらも、露骨に運動を開始した競争相手に抗する術はない。そんな折、刺客に襲われた江戸からの使者を偶然助けたことから、藩内に不穏な動きがあることに気付く、という「榎屋敷宵の春月」の四編を収めた短編集。

藤沢周平作品を初めて読みました。
各編に物語上の繋がりはありませんが、不遇な境遇にある主人公が矜持を持って再び立ち上がるというプロット、そして主人公の境遇の影に藩内の不正がある、など共通要素は多く見られます。
また四編全て非凡な剣士が主人公になっていますが、最後の一編のみ、それが夫の出世を願う女性だというのが面白いところでしょうか。
ミステリー仕立てになっていてどんでん返しがある点、また仄かなラブストーリーが隠し味的に効いている点も、最後まで興味を引いています。
by odin2099 | 2009-01-10 14:06 | | Trackback(1) | Comments(2)
トラックバックURL : https://odin2099.exblog.jp/tb/9383601
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 電網郊外散歩道 at 2009-01-11 08:30
タイトル : 藤沢周平『麦屋町昼下がり』を読む
文春文庫で、藤沢周平著『麦屋町昼下がり』を読む。四つの短編が収録されているが、一つ一つが実に味わい深く、印象に残る作品だ。 表題作である第一話では、深夜に刀を振り回し若い女を追う男と切り結ぶ羽目になった片桐敬助がやむなく斬った男は、奇人として名高い天才剣士・弓削新次郎の父親であった。戦っても勝ち目はない。偏執的な弓削新次郎の復讐を恐れ、片桐は師匠の野口源蔵に相談し大塚七十郎の教えを受ける。やがて、弓削新次郎は妻女と密会の相手、そして徒目付ら数名を切り殺し、麦屋町の茶屋に立てこもる。大目付が命じた討手は...... more
Commented by narkejp at 2009-01-11 08:44 x
こんにちは。トラックバックをありがとうございます。ドラマのほうは、残念ながら見逃しましたが、原作となったこの四編は、いずれもおもしろく、素晴らしい作品ですね。武家物短編集では、「三月の鮠」などを含む『玄鳥』などもお気に入りです。
貴ブログは、映画や本の記事がたくさんあって、読み応えがありますね。さっそくブックマークに入れさせてもらいます(^_^)/
Commented by odin2099 at 2009-01-12 13:06
>narkejp様

いらっしゃいませ、有難うございました。
今回、実はドラマへの興味が先で、それで小説も読んでみようと思い立ったのですが、どれも読みやすく面白かったです。
中にはもう少し長くても良いかな、と思われるものもありましたが。
以前より藤沢周平の名前には関心がありましたが、これを機会に他の作品も読んでみたくなりましたね。

ドラマ版、原作とはかなり趣の違うものになってはいましたが、個人的にはかなり楽しめました。
そちらも記事にしましたので、宜しければご覧下さい。
ブログトップ