『花の誇り』(2008)
2009年 01月 11日
それから十三年後、田鶴の婿・織之助と三弥の夫・宗方惣兵衛が家老の座を争うことになり、三弥に負けたくない田鶴は気弱な夫の尻を叩く。そんな折田鶴は、屋敷の前で刺客に襲われていた旅の侍を救い出す。その侍・関根友三郎は、国許に不正ありとする密書を携え、大目付の屋敷へと向かっていた使者だったのだ。しかも関根は田鶴の亡き兄・新十郎と瓜二つであった。
だがいつしかそのことは、筆頭家老である平岐権左衛門の知るところとなる。平岐に逆らえば織之助の家老の芽はない。黙って耐えようとする織之助、夫を詰る田鶴。しかし否応なしに二人は陰謀の渦に巻き込まれてしまっていた。おびき出された関根が惨殺された時、田鶴は仇討ちを決意する。

そのために人物設定にはかなりの脚色が加えられた。
先ず田鶴だが、小太刀の遣い手なのは同じだが、寺井家の養女で兄・新十郎とは義理の兄妹になっているのはドラマ独自のもの。原作では二人とも寺井家とは何の関係もなく、寺井家はあくまで田鶴の嫁ぎ先ということ以外の意味はない。
また原作には兄に恋心にも似た想いを抱いていて、それで三弥に対して嫉妬の念を覚えているという描写があるが、そのあたりは実の兄妹でない方が自然だ。もっとも逆にドラマ版ではそこまで深く掘り下げてはいないのは勿体無いが。

また三弥の夫の惣兵衛は原作では影が薄いが、ドラマ版ではかなり懐の深い、人情味溢れる好人物となっている。
そして一番大きく変わっているのが三弥。
原作での三弥は計算高く小ずるく立ち回り、言ってみれば成金趣味のかなり嫌な女のように描かれているのだが、ドラマ版では幼い頃から田鶴に対してかなり複雑な感情を抱いているという所謂ツンデレの性質を持ち、また原作には全くない”禁断の恋愛”の香りを漂わせるという変貌振り。ただ物語上ではこのような脚色を施されているほうが、流れとしてはわかり易い。
新十郎と関根が瓜二つというのもドラマ版独自のアレンジで、また殆どの人物が原作より膨らまされているにも拘らず、何気に鍵を握る重要な人物・小谷三樹之丞のみ扱いが軽くなっているように思えるのが残念なのと、瀬戸朝香がちっとも強そうに見えないのは難ではあるが、酒井美紀、田辺誠一、葛山信吾、山口馬木也、大谷亮介、松金よね子、遠藤憲一、石橋蓮司らのキャストも総じて好演で、おそらく原作小説のファンには不評だろうと思うが、ドラマとしては原作よりも楽しめた。
原作では結末を断定せず読み手の想像の余地を残したが、ドラマ版ではハッキリとハッピーエンドを想定しており、それも悪くないと思っている。

『時代劇スペシャル 花の誇り〜藤沢周平の傑作、女の戦いと友情、仇を討ちます!』内容寺井田鶴(瀬戸朝香)と宗方三弥(酒井美紀)幼なじみの2人は、ある事件をきっかけにして敵対するようになる。そんななか、空席となった家老職をめぐって、お互いの夫を。。。。敬称...... more

