『福家警部補の挨拶』 大倉崇裕
2009年 01月 12日
収録されているのは「最後の一冊」、「オッカムの剃刀」、「愛情のシナリオ」、「月の雫」の四篇で、何れも最初に犯人が提示される倒叙型のミステリー。
本を愛するあまり、図書館を売却しようとするオーナーを殺害してしまう司書、忌まわしい過去を知られ、恐喝相手を殺害する大学講師等々、犯人側の葛藤や動機、背景もきっちりと描かれており、凶悪無比で冷酷な殺人者というタイプの犯人像は皆無なので、逮捕されてメデタシメデタシで終っていないところも良い。
倒叙型の場合、読み手には犯人が明らかにされているので、探偵役が決められたゴールへと向かうのを見ているだけということになってしまいがち。その推理の整合性には目が向かなかったりすることもあるが、このシリーズでも犯人の目星を付けた理由が明示されるわけではないので、何となく辻褄あわせをしているだけに感じる部分もなくはないのだが、彼女が推理を推し進めていく過程は充分に楽しめる。
後はシリーズ・キャラクターの福家警部補が、今のところ得体の知れない人物になりすぎている嫌いがあるので、もう少し感情移入できるというか、キャラクターの幅が広がるともっと面白くなると思うのだが。
巻末の解説によると、著者は少年時代にあの『刑事コロンボ』にハマリにハマッた人であり、長じてからはノベライズまで手がけているという。 ・内容 本への愛を貫く私設図書館長、退職後大学講師に転じた科警研の名主任、長年のライバルを葬った女優、良い酒を造り続ける..... more
福家警部補の挨拶大倉 崇裕 東京創元社 2006-06-27売り上げランキング : 114146おすすめ平均 『コロンボ』のスピリッツを継いだ、古典的で上質なミステリーコロンボ、古畑を知らずとも楽しめます旧コロンボの世界観!Amazonで詳しく見る by G-Tools 練りに練られた計画殺人。しかし、犯人を鋭く追い詰めていく一人の刑事がいる。福家警部補は巧みな話術と豊富な記憶、そして幾晩もの徹夜に耐えうる体力を武器に犯人の口を割らせてしまうのだ。コロンボマニアの手による倒叙推理作品集。 ...... more
練りに練られた計画殺人。しかし、犯人を鋭く追い詰めていく一人の刑事がいる。福家警部補は巧みな話術と豊富な記憶、そして幾晩もの徹夜に耐えうる体力を武器に犯人の口を割らせてしまうのだ。コロンボマニアの手による倒叙推理作品集。 倒叙推理といえばやっぱり刑事...... more