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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『福家警部補の挨拶』 大倉崇裕

e0033570_21244329.jpg小柄で童顔、ちっとも刑事には見えないという福家警部補の活躍を描いた短編集。警部補は三十過ぎと思われる女性なのだが、下の名前が不明ということもあって、キャラクター・イメージが意図的にぼかされているのはちょっと異色だ。

収録されているのは「最後の一冊」「オッカムの剃刀」「愛情のシナリオ」「月の雫」の四篇で、何れも最初に犯人が提示される倒叙型のミステリー。
本を愛するあまり、図書館を売却しようとするオーナーを殺害してしまう司書、忌まわしい過去を知られ、恐喝相手を殺害する大学講師等々、犯人側の葛藤や動機、背景もきっちりと描かれており、凶悪無比で冷酷な殺人者というタイプの犯人像は皆無なので、逮捕されてメデタシメデタシで終っていないところも良い。

倒叙型の場合、読み手には犯人が明らかにされているので、探偵役が決められたゴールへと向かうのを見ているだけということになってしまいがち。その推理の整合性には目が向かなかったりすることもあるが、このシリーズでも犯人の目星を付けた理由が明示されるわけではないので、何となく辻褄あわせをしているだけに感じる部分もなくはないのだが、彼女が推理を推し進めていく過程は充分に楽しめる。
後はシリーズ・キャラクターの福家警部補が、今のところ得体の知れない人物になりすぎている嫌いがあるので、もう少し感情移入できるというか、キャラクターの幅が広がるともっと面白くなると思うのだが。
by odin2099 | 2009-01-12 21:25 | | Trackback(3) | Comments(0)
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