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『カラヤン 帝王の世紀/孤高の天才指揮者、波乱の100年』 中川右介

指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの伝記、という一面があるのは間違いないのだが、それ以上に、カラヤンという人物を通して20世紀を語ろうという試み――歴史書と呼ぶか、20世紀の回顧録と表現すべきか――、に重点が置かれている一冊。

『カラヤン 帝王の世紀/孤高の天才指揮者、波乱の100年』 中川右介_e0033570_6243813.jpgカラヤンは1908年に生まれ、1989年に亡くなっているので正に20世紀を代表する人物だが、ページは20世紀の幕開け、カラヤンが生まれるどころか両親が結婚してもいない1901年から始まり、そしてその死後、20世紀の終わり、そして生誕100年となる2008年で締めくくられている。
例えば1912年の項を紐解くと、この年カラヤンは4歳、本格的にピアノを習い始めた年であると記されている。そして人前でピアノを演奏している。つまり巨匠初めてのコンサートが開かれた年でもあるのだ。

だが記述はそれだけではない。
同じ年にはチェリビダッケやショルティ、ヴァントといった後のライバル指揮者たちが生まれた年でもあると記されているし、何よりも我々に身近なのは元号が明治から大正に変わった年だ、ということではないだろうか。また、あのタイタニック号が沈没した年でもある。
こうして読者はカラヤンのライフストーリーを知るだけでなく、世界の動きも知ることが出来るのだ。

そして音楽好きには、カラヤンとの関わりのあるなしに限らず、著名な音楽家の動静もチェック出来る。
1950年の項、カラヤン42歳の年は、ウィーン・フィルでのフルトヴェングラーとの対立が表面化した年であり、ピアニストのリパッティが亡くなった年であり、ジュリーニはミラノ・イタリア放送管弦楽団の音楽監督に就任し、マリア・カラスがデビューした年でもある、といった具合。
音楽を中心に20世紀を俯瞰出来るとは、教科書では味わえない近現代史の愉しみ方ではなかろうか。
by odin2099 | 2009-01-22 06:25 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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