『MM9』 山本弘
2009年 01月 30日
実はこの「MM」というのは「モンスター・マグニチュード」の略。この物語の中では何故か世界各地に多種多様な怪獣が出現し、それによって起こる様々な災害の規模をこの数値で表しているのです。地震の規模を示すマグネチュードと似たようなもんですね。怪獣が暴れるのも地震や台風と同じ自然災害だと考えられているようです。

日本は有数の怪獣大国ということになってるらしく、気象庁に怪獣対策のスペシャリストを集めた「特異生物対策部」、通称「気特対」というものが設置されていて、この物語の主人公たちはこのチームのメンバーです。
まぁ早い話、『ウルトラマン』における科学特捜隊や『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊のようなもの、と言えばわかりやすいかもしれませんが、彼らの仕事は怪獣を調べてその被害を予測し、弱点を調べて攻撃を含めた対処方法を考えること。現場要員もいますが、それは情報を収集し分析するための存在で、実際に怪獣と戦うのは自衛隊の役目です。専用のメカニックを操り、超兵器を携え、という科特隊のイメージとはまるで違う地味な存在ですが、その分リアリティはかなりあると言ってもいいんじゃないかと思います。
予測が外れたり、対策が後手後手に廻ったなど、世論の批判を浴びる厳しい部署とされているのもその一つですね。
この作品は5つのエピソードで構成された連作短編集で、それぞれのお話は独立していますが、最終エピソードでそれらが一つに収斂していくというワクワク感もあります。基本的にはパロディ色は薄めで、作中ではゴジラのゴの字も、ガメラやウルトラマンへの言及も一切ありませんが、過去に出現した怪獣の設定には、あ、これはアレかな?と思えるものが幾つかあり、”大きなお友だち”は更にニヤリと出来る仕掛けになっています。
妖怪(?)が出てきたり、神話や民俗学などに触れているのも個人的にはプラスポイント。
せっかくの世界設定、キャラクター設定なので、このままオシマイでは勿体無い。是非続きを書いて欲しいものですね。

MM9 山本 弘 JUGEMテーマ:読書 世界は怪獣災害に悩まされていた。どこからともなく現われて人々に害を与えて去ってゆく怪獣。そんな怪獣に立ち向かう気象庁特異生物対策部、通称「気特対」そんな気特対の活躍を描く5つの連続短編集。 自然災害の一種としてフツーに「怪獣災害」が存在する現代。そんな世界にすんなりと入り込めれば、すごく面白い物語。ちょっと有川さんの物語にも似てます。乙女度が低い有川さんと言う感じかな。 タイトルのMMは「モンスターマグニチュード」の略。怪獣のサイズか...... more

JUGEMテーマ:読書 地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、怪獣対策のスペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」、略して「気特対」が日夜を問わず日本の防衛に駆け回っていた。 多種多様な怪獣たちの出現予測に正体の特定、そして自衛隊と連携するべく直接現場で作戦行動を執る。世論の非難を浴びることも度々で、誰かがやらなければならないこととはいえ、苛酷で割に合わない任務だ。それぞれの職能を活かして、相次ぐ難局に立ち向かう気特対部員たちの活躍...... more
さっそく書店で探してみます。
こういう発想の積み重ねが怪獣映画をちゃんとしたSFとして認知させるきっかけになると思います。ゴジラもウルトラマンも、たまに脱線することはあっても原点は常にきちんとした思想もマインドもあるSFだと思うし。
この作者を脚本に迎えて怪奇大作戦、続き作らないかしら。
ファンの間では、有川浩作品を東宝特撮で、という声もあるようですね。
原作付きの怪獣映画、ベストセラー作品の映画化企画としての怪獣映画、というのも考えて良い時期かも知れません。
これまでの怪獣映画は殆ど映画用のオリジナルストーリーでしたから、映画畑じゃない人の考案したストーリー、アイデアというのも検討すべきでしょう。