神聖ローマ帝国第18代大公にしてオーストリア貴族の末裔マルコ・リング、しかし彼の裏の顔は凄腕のCIAエージェントだった――というジェラール・ド・ヴィリエの<SAS/プリンス・マルコ>シリーズの映画化作品。
といってもそれほど知名度が高いとも思えないのだけれども、かつては翻訳本が50巻以上出版され、最近もまた新シリーズの翻訳刊行が始まっているという長寿なベストセラー・シリーズだったりする。
映画も何本か作られているらしいが、日本で公開されたのはこの一本だけ。

今回のマルコの任務は、暗殺された武器商人の未亡人を保護し、盗まれた細菌兵器を処分すること。
予備知識がないもので、これが原作の一挿話を映画化したのか、それとも映画用のオリジナル・ストーリーなのかは知らないけれども、登場人物がやたらと込み入っていて、誰と誰がどういう関係なのかが今ひとつわかりづらいのが難。
最後もこれで全て解決したのか曖昧だし、ハッピーエンドと呼んでいいものかどうかもわからないという有様。
シナリオの時点か、あるいは撮影後の編集段階かでバサバサと切り落としたのかも知れない。
100分程度のアクション映画は気楽に観るのは良いけれど、説明不足は困りものだ。
主演はリチャード・ヤング。
以前この映画を観た時は気付かなかったけど、この人は『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』で、ヤング・インディに大きな影響を与えたフェドラー帽の男を演った人だったんだね。
あの映画では格好良いなぁと思ったけど、主役にすると華がない…。
ヒロインはアナベル・スコフィールド、CIA局長はメル・ファーラーで、マルコの仲間にポール・スミスやハリソンの弟テレンス・フォードら、悪役にはF・マーリー・エイブラハム、ベン・クロス等々を配し、監督はB級アクションの雄アンドリュー・V・マクラグレン、という具合にそれほど”安い”映画ではないはずなのだが、出来上がりはかなり”地味~な”映画。
画面はしょぼいし、お金のかけ方に少々問題があったのかも知れない。
「さらばジェームズ・ボンド、90年代は俺がもらった!!」――007シリーズの休眠期に作られただけにコピーだけは勇ましいが、結局は空回りの一編となってしまった。
しかし全体に漂うB級臭は嫌いじゃないし、スパイ・アクション物がボンドだけというのもつまらないので、作品の存在自体は肯定したい。