国鉄蒲田駅操車場で、一人の男の他殺死体が発見された。
しかしその身元は不明で、手掛かりは被害者が残した東北弁の「カメダ」という言葉。
特別捜査本部は更なる手掛かりを求めて東奔西走するが、その捜査は難航を極める。
そんな時、突然被害者の身元が割れ、事件の鍵を解く鍵は東北地方ではなく、出雲にあることが判明。
やがて捜査線上に、今注目を集めている若手天才音楽家が浮かび上がってきた…。

松本清張の小説を、橋本忍と山田洋次が脚色し、野村芳太郎が監督したミステリー、サスペンス映画の傑作。
犯人が誰かではなく、その動機に焦点を絞った人間ドラマであり、難病を患った人への差別に対する痛烈な批判を込めた作品になっている。
そのお話の面白さもさることながら、やはりこの作品のポイントは日本の四季の美しさを捉えた映像と、そして芥川也寸志音楽監督の下、菅野光亮が作曲した「ピアノと管弦楽のための組曲」と題された『宿命』だろう。
クライマックスでは台詞を極力排し、映像と音楽だけで一気に見せる展開が実に見事である。
今回観直してみたけれども、その素晴らしさは不変。
原作小説は未読だが、この部分だけは少なくても原作を超えているだろうことは間違いない。
粘り強く捜査に当たる丹波哲郎と森田健作の刑事コンビも良い。
個人的にはこの作品にはちょっと変わった思い出がある。
というのもある時、全く別の友人三人からそれぞれこの作品を薦められたのだ。
リバイバル公開があったとか、ビデオやCDが発売されたとか、特別にこの作品がブームになっていたり再評価されていた訳でもなく、別の日に個別にたまたま同じように映画の話題が出た際に、異口同音にこの作品の題名が挙がったので、これも何かの縁なのかなと思って観る気になったという次第。
”運命”(いや、この作品的には”宿命”か)というものは実生活においては信じるほうではないのだけれども、”天啓”というか不思議な感じがしたのものである。