『点と線』 松本清張
2009年 02月 21日
そんな折、東京から警視庁捜査二課の三原という人物がやって来た。彼は汚職事件を追っていたのだが、その鍵を握っていたはずの人物の死について調査をしており、その過程で鳥飼の疑念に興味を覚えたのである。
東京に戻った三原は、鳥飼の掴んだ手掛かりから、ある男の行動に着目した。
その男の行動は、今回の情死とは一見すると無関係と思われた。件の死体が発見された時には遠く北海道に居り、二人とその男を結びつける糸は容易には見つからない。しかしアリバイが完璧であればあるほど、三原にはその男が関与していたに違いないとの思いを強くしていく・・・。
この作品が松本清張初挑戦!
ジャンルとしては「アリバイ崩し(アリバイ破り)」というものになるのだろう。

この場合、A地点とB地点は遠ければ遠いほど良い。歩いて10分くらいしか離れていないとするならば、事件の後に移動することだって可能だからだが、今回の事件が起きたのは九州、そして容疑者がいたのは北海道。交通が発達した現在でも、短時間でピューッと移れる距離じゃない。
勿論、証言者が偽証していたり、替え玉を使ってれば別だが、そうじゃなければその人は容疑者から外さざるを得ない。
はたして主人公はどうやってアリバイ崩しをするのかと興味津々で読んでいると、出てきた答えは「飛行機を使うこと」?! なんじゃそりゃ。
鉄道での移動にばかり拘っていたから不可能に思えたことが、実は旅客機を使えばOKなのよ、それって盲点だったんだよねー、と言われたって、読んでいてハイ、そうですか、と納得出来るわけがない。ヒコーキの方が電車より早いの当たり前じゃん。
・・・いやはやすっかり騙されました。
この小説が書かれたのが昭和30年代の初めだというので、てっきり今みたいに旅客機での移動が一般的じゃないから、端から飛行機の線は除外してたのかと思ってた。なんだよ、もっと早くに気付けよ。
で、このアリバイ崩しが成立すると、事件は一気に解決。あっけないねぇ。
しかもその後に明らかにされる事件の”真相”とやらは、全て三原の推測、憶測。本当にその通りだったという保証はどこにもないのだ。
うーん、これが「松本清張の最高傑作」と呼ばれる作品なのかなぁ・・・。
発表当時と今とでは時代が違うというのも確かにあるだろうけれど(移動手段が多様化し、移動時間も短縮され、携帯電話で簡単に連絡が取れる今のご時勢では、このトリックは成立しないんじゃなかろうか)、それを除外してもお話の組み立て方、運び方には随分と疑問符が付いてしまう。