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『シャーロック・ホームズと賢者の石』 五十嵐貴久

パロディと外伝、その境界ギリギリのところで書かれたシャーロック・ホームズを扱った短編集。

「彼が死んだ理由―ライヘンバッハの真実」は、ホームズとモリアーティの激闘の裏側(?)を描いた作品で、ある種のメタフィクションのような構成。モリアーティ教授の正体(!)を含め、熱心なシャーロッキアンには受け入れがたい”真実”が明らかにされる。

『シャーロック・ホームズと賢者の石』 五十嵐貴久_e0033570_21162738.jpg「最強の男―バリツの真実」は、ホームズが身に着けている謎の格闘技”バリツ”が何なのかが明かされる一編。
公表しないとの約束でホームズがワトスンに語ったのは、珍しい彼の失敗談。ただその結果、ホームズはとあるブラジル人からバーリ・トゥードの技術を学び、それを聞き間違えたワトスンが”バリツ”と記してしまったという次第。
で、そのブラジル人の名前がガスタン・グレイシー、その息子がエリオというのがオチだ。

「賢者の石―引退後の真実」は、引退後に体調を崩したホームズを、転地療養とばかりにワトスンはニューヨークへと連れ出すが、そこで息子が誘拐されたという歴史学者から助力を求められるというもの。
その学者の専門が中世で、名前がヘンリー・ジョーンズ教授となれば、誘拐されたという息子は勿論・・・・・・。
ちなみにこの作品には例の犬も登場し、しかもその名付け親がホームズだったというオチが付く。

最後の「英国公使館の謎―半年間の空白の真実」は、明治時代の日本が舞台。
英国公使館で殺人事件が起こり、これがかの”切り裂きジャック”事件と酷似していて・・・という具合に、謎が謎を呼ぶ展開を見せるという内容。
最後には何故か『半七捕物帳』で知られる岡本綺堂ともリンクしてしまうという力技を見せてくれる。

多分に遊び心に満ちた作品ばかりで、一歩間違えれば単なるギャグになってしまうところを辛うじて踏みとどまっているというところか。
正典のみを愛好する人には受けないだろうが、エンターティンメントとしてはこれくらいの脱線も許容範囲ではないだろうか。

巻末には、光文社文庫<新訳シャーロック・ホームズ全集>の翻訳を担当した日暮雅道の手になる「ホームズ・パロディ/パスティーシュの華麗なる世界」を併録。なかなか史料価値のある一冊でもあると思う。
by odin2099 | 2009-02-26 21:17 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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