『ぼくのミステリな日常』 若竹七海
2009年 03月 25日

仕方なく小説書きを趣味にしていた大学時代の先輩を頼るのだが、彼自ら原稿を書くことは断ったものの、匿名を条件に書いてもいいという友人を紹介される。
かくして正体不明の作家から、毎月一編の短編小説が届けられることになったのだが・・・。
この本は連作の短編集ですが、ちょっと変わった構成になっています。
プロローグ部分は七海から先輩への原稿依頼の手紙、先輩から七海への返信(匿名作家の紹介)、そして更に七海から先輩への手紙(応諾)と続き、匿名作家が小説を発表することになった経緯の説明に当てられています。
続いて毎月の社内報からの抜粋という形で全部で十二編の物語が置かれていますが、このパートは社内報の目次部分も作られていたりでなかなか凝った仕掛けが施されています。
次が連載終了後に、七海が先輩と一緒に匿名作家を訪ねる話。ここで作者の正体や匿名を条件にした理由などが語られ、そしてエピローグ部分ではその作家から七海への手紙という形で締めくくられているのですが、この十二の短編は一つ一つは独立した内容でありながら全体で大きな一つの物語になっており、その物語が生み出されるに至った過程がまた、一つの大きな謎となっているのです。
それぞれの短編は怪談調だったり、ミステリーとは呼べないゆるーいラブコメ調のものがあったりとバラエティに富んでいますし、全体で一つの大きな仕掛けがあることから、きちんとしたミステリー物になっているという具合に一粒で何度も美味しく、なおかつ読みやすいお勧めの作品です。

建設会社で社内報を創刊することになり、その編集長に任命された若竹七海氏。娯楽面充実のために小説を載せて欲しいと上層部からの要請があり、困り果てた末 大学時代の先輩にすがった所、匿名作家でよければ紹介してやろうとのこと。かくして1年間、身元不明の書き手から編集デスクに届いた短編小説は12本。 そして、匿名作家と対面する日がやってきた・・・ 若竹さんのデビュー作。再読です。いや〜何が驚いたかって自分の見事なトリ頭っぷりに!(笑) 社内報に掲載されたこの匿名作家の短編小説を4月の「桜嫌い」から翌年3月の「吉...... more

1991年に、殺人事件の出てこないミステリー連作短編集として単行本として出版されたのが本書「僕のミステリな日常」である。この頃から北村薫「空飛ぶ馬」に触発されて、殺人の起きないミステリーが書かれ始めたと言っても言い過ぎではないと思う。ところが、評者。実は「空飛ぶ馬」は、そこまで面白く感じなかった。本書も、終盤を読むまでは、▲の評価を考えていた。 会社の、社内報の編集者になった主人公若竹七海。月刊の社内報に短編小説を掲載することを思いつく。ある社外の先輩にお願いしようとしたら、匿名及び覆面を条...... more