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【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

2006年 11月 08日 ( 1 )

全世界で大ヒットとなった『スター・ウォーズ』。この作品に続編が作られることは、かなり早い段階から公表されていましたが、その内容となると製作サイドのガードは固く、ファンの間ではああでもないこうでもないと無責任な噂が流れていました。
ジョージ・ルーカスはどうやら監督をしないらしいという話も早くから伝わっていて、監督にはスティーブン・スピルバーグが立候補しているそうだ等々、それもまたファンの楽しみだったわけです。

e0033570_2352022.jpgそれにしても、これだけ暗く重たい作品になると予想していた人はどれくらいいたでしょうか。
局地的な勝利は、所詮戦局を大きく左右することはないということなんでしょうが、文字通り圧倒的な力を持って復活した帝国は逆襲に転じます。前作のハッピー・エンドは、本編が始まる前の「これまでのあらすじ」部分でいきなり否定され、帝国軍に対して華々しい勝利を収めたはずの反乱軍は、一転して窮地に追い込まれていることが明らかにされるのです。

またルークとレイア、そしてハンの三角関係は別行動をとることになって更に複雑にもつれ、絡まりあい、「ジェダイになるんだ、頑張るんだ」と言ってるルークを余所に、あれよあれよと言うまにハンとレイアがくっ付いてしまうという結末を迎えます。本来ならヒーローであるルークとヒロインであるレイアが結ばれる方が自然なんですけれどねぇ。
一方ジェダイになるべく頑張りながら、オビ=ワンとヨーダという二人のお師匠さんから「お前は辛抱が足らん」と説教されながらも結局は短慮な行動に走ってしまったルークは、挙句の果てに父の仇のはずの当のダース・ヴェイダーの口から「私がお前の父だ!」と衝撃の告白をされてしまう始末。ルークもハンも文字通り精神的にも肉体的にもボロボロの状態でエンディングを迎え、新たな謎が提示されて、しかもそれが未解決なままで終幕。主人公たちとの再会を楽しみにして来た観客たちは、その歓びも束の間、引き裂かれ大きく翻弄される彼らの運命をただ呆然と見つめるのみ。これが、あの、楽しい大冒険活劇『スター・ウォーズ』の続編なのでしょうか――?

初めて見た時の印象が強烈すぎたせいか、この作品は今もって好きにはなれません。
お子様ランチだった前作に比べると、人間ドラマが描けているからと評価する声も大きいのですが、その一方で「半分ほど大人になりかけた少年や、まだ半分は子供でいる大人へ」を対象にした前作の、素朴な、そして問答無用の楽しさが失われたのは事実でしょう。次なる『ジェダイの復讐』へと連なる<三部作>のブリッジとしてのみ評価に値する、と言ったら言い過ぎでしょうか。

さて、この作品で最大の注目ポイントは、ダース・ヴェイダーがルークに語る「私がお前の父だ」という台詞でしょう。前作ではオビ=ワンは、「私の弟子にダース・ヴェイダーという若い騎士がいた。奴が裏切ってお前の父親を殺したのだ」と言っていたのですから、多くの観客が驚いたでしょうし、またかなり唐突に感じられる台詞でもあります。
次回作『ジェダイの復讐』では、真実を問われたオビ=ワンはルークに対し「善良だったアナキン・スカイウォーカーは、暗黒面に囚われてダース・ヴェイダーとなってしまった。その時アナキンはヴェイダーに殺されたのだ、見方を変えれば」と苦しい弁明をしていますが、それもそのはずで、当初は”ヴェイダー=ルークの父親”という設定はなかったのです。その証拠に『帝国の逆襲』の草稿段階では、ヨーダ(という名前ではまだありませんが)の元で修行中のルークの前に、霊体となったオビ=ワンに伴われてヴェイダーではないルークの父親が霊体となって姿を見せています。
そして重要なことを告げるのです。「お前には妹がいる」と。

この妹の名前は「ネリス・スカイウォーカー」
これまたレイア・オーガナとは何の関係もありません。つまり”レイア=ルークの妹”も後付け設定なのです。そもそも前作の段階では「ルーク20歳」「レイア18歳」という設定だったのですから、2歳も歳の離れた双子がいるわけないですよね。
ただ最終的にはネリスとレイアの設定は一本化され、これがダゴバでのオビ=ワンとヨーダの遣り取り(「あの子が最後の希望です」「いや、もう一人おる」)と、終盤のベスピンでのルークの呼び掛けに感応するレイアという形で次回作へ伏線を張るようになったのです。

後付けといえば本作で初登場するジェダイ・マスターのヨーダ、彼も当初から設定されていたキャラクターではありませんでした。そもそも前作でオビ=ワンは、死ぬ予定ではなかったのです。
ただ後半ではルークを見守るくらいしか出番がなくなってしまうため、物語上のアクセントをつけるため(オビ=ワン役のアレック・ギネスの提案とも言われていますが)ヴェイダーに殺されるように変更されたのですが、今度は本作でルークの修行を続けさせるための新たなキャラクターが必要となってしまい、そこで生み出されたのがヨーダというわけなのです。

e0033570_2345787.jpgこうしてみると、全作が綿密に構成されている、と一般には喧伝されているはずの『スター・ウォーズ』というシリーズが、意外に行き当たりばったりで作られていたことがわかります。
ただ、だからと言ってシリーズがつまらないということではなかったのが凄いところで、これは天の配剤とでも言えば良いのでしょうか。
最近では『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズが、この『スター・ウォーズ』シリーズと似たような構造を見せています。こちらも最初から三部作構想ではなかったと思われますので、今後無理なくまとめることが出来るかどうか、ちょっといじわるな気持ちを持ちながらも楽しみにしたいですね。

ところでこの作品、初公開の時は字幕スーパー版だけではなく日本語吹替版も同時に公開されていました。最近では大作・話題作では吹替版を作って同時に公開することは珍しくなくなりましたが、あの頃は吹替といえばTVで放映される時くらいですので極めて画期的なことだったと思います。
ただ評判はあまり芳しいものではなかったようですね。前作はリバイバル公開の時に吹替版オンリーで上映しましたが、次の『ジェダイの復讐』では端から作られていません。最近発売された<リミテッド・エディション>DVDでは、前作同様にこの貴重な吹替版が収録されています。しかしやたらと早口で棒読みが目立つ演技陣や、「コマンダー・スカイウォーカー」「ロード・ヴェーダー」「アンクル・オーウェン」「ヒア・ゼイ・カム」などなど英語チャンポンの中途半端な吹替台詞は、やはり好みが大きく分かれるだろうと思います。
by odin2099 | 2006-11-08 23:08 |  映画感想<サ行> | Trackback(4) | Comments(8)
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