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【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

2009年 01月 11日 ( 2 )

寺井家の養女・田鶴と宗方家に嫁いだ三弥は、共に城で行儀見習いをした幼馴染み。だが田鶴は、兄・新十郎が若くして自死した理由が、相思相愛に思われた三弥に振られたからだと思っていた。
それから十三年後、田鶴の婿・織之助と三弥の夫・宗方惣兵衛が家老の座を争うことになり、三弥に負けたくない田鶴は気弱な夫の尻を叩く。そんな折田鶴は、屋敷の前で刺客に襲われていた旅の侍を救い出す。その侍・関根友三郎は、国許に不正ありとする密書を携え、大目付の屋敷へと向かっていた使者だったのだ。しかも関根は田鶴の亡き兄・新十郎と瓜二つであった。
だがいつしかそのことは、筆頭家老である平岐権左衛門の知るところとなる。平岐に逆らえば織之助の家老の芽はない。黙って耐えようとする織之助、夫を詰る田鶴。しかし否応なしに二人は陰謀の渦に巻き込まれてしまっていた。おびき出された関根が惨殺された時、田鶴は仇討ちを決意する。

e0033570_21533091.jpg年末にNHKで放送されていた「時代劇スペシャル」で、原作は藤沢周平の『榎屋敷宵の春月』。原作は短編だが、それを膨らませて1時間半のドラマに仕立てている。
そのために人物設定にはかなりの脚色が加えられた。

先ず田鶴だが、小太刀の遣い手なのは同じだが、寺井家の養女で兄・新十郎とは義理の兄妹になっているのはドラマ独自のもの。原作では二人とも寺井家とは何の関係もなく、寺井家はあくまで田鶴の嫁ぎ先ということ以外の意味はない。
また原作には兄に恋心にも似た想いを抱いていて、それで三弥に対して嫉妬の念を覚えているという描写があるが、そのあたりは実の兄妹でない方が自然だ。もっとも逆にドラマ版ではそこまで深く掘り下げてはいないのは勿体無いが。

e0033570_9482384.jpg田鶴の夫・織之助は原作では小心で情けない人物だが、ドラマ版では次男坊に生まれ、婿に出され、しかも自死した男の身代わりにされているという鬱屈した想いを持ちながら、内には正義を秘めた人物として描かれ株が上がった。
また三弥の夫の惣兵衛は原作では影が薄いが、ドラマ版ではかなり懐の深い、人情味溢れる好人物となっている。

そして一番大きく変わっているのが三弥。
原作での三弥は計算高く小ずるく立ち回り、言ってみれば成金趣味のかなり嫌な女のように描かれているのだが、ドラマ版では幼い頃から田鶴に対してかなり複雑な感情を抱いているという所謂ツンデレの性質を持ち、また原作には全くない”禁断の恋愛”の香りを漂わせるという変貌振り。ただ物語上ではこのような脚色を施されているほうが、流れとしてはわかり易い。

新十郎と関根が瓜二つというのもドラマ版独自のアレンジで、また殆どの人物が原作より膨らまされているにも拘らず、何気に鍵を握る重要な人物・小谷三樹之丞のみ扱いが軽くなっているように思えるのが残念なのと、瀬戸朝香がちっとも強そうに見えないのは難ではあるが、酒井美紀、田辺誠一、葛山信吾、山口馬木也、大谷亮介、松金よね子、遠藤憲一、石橋蓮司らのキャストも総じて好演で、おそらく原作小説のファンには不評だろうと思うが、ドラマとしては原作よりも楽しめた。
原作では結末を断定せず読み手の想像の余地を残したが、ドラマ版ではハッキリとハッピーエンドを想定しており、それも悪くないと思っている。
by odin2099 | 2009-01-11 18:33 | テレビ | Trackback(3) | Comments(0)
松岡圭祐の『催眠』を原作としたサイコ・ホラー映画で、稲垣吾郎、菅野美穂、宇津井健が主演し、『パラサイト・イヴ』でJホラー(という表現はもう使わないか)の立役者となった落合雅幸が監督した作品。

e0033570_13211066.jpg常識では考えられない変死事件が続発していた。一見自殺とも見えるがその動機は弱く、その死に際に「ミドリの猿」という謎の言葉を残しているという共通点もあった。捜査に当たっている櫻井刑事に請われ協力することになった心理カウンセラーの嵯峨敏也は、死亡者がいずれも催眠暗示をかけられていた可能性を示唆する。そんな時、催眠術を見世物にしているテレビ番組に出演していた女性が、「ミドリの猿」と口にしていたことに気付いた櫻井と嵯峨は、その女性・入江由香が何らかの鍵を握っていると睨み、接触を図ろうとするのだったが・・・。

もう10年前の作品になりましたね。ホラー好きの友人から薦められて観た作品で、その人は「怖くてダメ」と言ってましたけれど、意外にもホラー嫌いの自分はそれほど怖さを感じませんでした。
それでも多重人格障害者を演じた菅野美穂の怪演や、事件の全貌というか黒幕の正体が不明瞭な点、それに事件は未だ解決していないことを匂わせるラストまで、じわじわと後を引く怖さはありました。

ただ、後になって原作小説を読んだ時はビックリ。嵯峨というカウンセラーの存在と、入江由香の設定以外はまるで別物。原作ではホラー色は皆無で、連続殺人事件なども起こりません。よくこれで原作者がOK出したものだなあと思ったのですが、どうやら原作とは徹底的に変えて欲しいというのは原作者側からの要望だったようですね。それにしてもジャンルから何から様変わりです。
最近原作を読み直したので映画も観直したのですが、やはりこれは別種の作品でしょう。

嵯峨のキャラクターも由香のキャラクターも原作とはまるでイメージが異なりますが、原作者は気に入ったようで、以後は原作シリーズの方を映画のイメージに合うように改変しています(最近はまた更に書き直しているようですが)。
そして映画のヒットを受けて、直結はしないものの続編映画である『千里眼』と、こちらは映画を受けたTVドラマ・シリーズ版の『催眠』も作られ、小説版とはパラレルワールド的な広がりを見せ、現在に至ります。
by odin2099 | 2009-01-11 13:21 |  映画感想<サ行> | Trackback(4) | Comments(0)
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