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【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

2010年 11月 01日 ( 1 )

『女甲冑録』という書名で刊行されていたものを、文庫化の際に改題したもので、表題作の「黒髪の太刀」をはじめ、「天冠」、「朱の面頬」、「忍城の美女」、「青黛」、「つる姫奮戦」の6編からなる短編集。

e0033570_21132741.jpg「黒髪の太刀」は宇喜多直家と戦った常山城の鶴姫の話、「天冠」は木曽義仲の愛妾・巴御前の話、「朱の面頬」は今川義元亡き後、混乱する今川家中にあって夫を失った田鶴姫の話、「忍城の美女」は最近頓に有名になった甲斐姫の物語、「青黛」は関ヶ原の合戦を舞台にした、伊勢安濃津の城主・富田信高の妻ゆきの方の話、そして「つる姫奮戦」は大三島水軍を率いて大内氏と戦った鶴姫の話、と全てタイトル通りの”姫武者”の様々なエピソードが語られている。

では彼女たちがそれぞれの作品の主人公なのかというとそうではなく、第三者の視点で語られているのが特徴。
その分彼女たちの内面描写がないので、短編と言う以上に内容が薄く感じられてしまうのが残念。
また巴御前だけ時代が違っているので、他の作品と並べてみると些かバランスが悪いようにも感じられるが、内容そのものは同系列なので読んでいる分には違和感は覚えない。

巴御前を別格にすると、この中で知っていたのは最近では”瀬戸内のジャンヌ・ダルク”と称されているらしい大祝鶴姫と、何かと話題の『のぼうの城』のヒロイン・甲斐姫ぐらい。
鶴姫に関しては実在したとする説と、伝承上の人物だとする説の両方があるようだが、今の時代に受けそうなヒロイン像だと思う。
甲斐姫はこの作品だと実に凡庸で精彩を欠いており、むしろ興味深いのは石田三成の方。戦下手とされる従来の三成像とは異なり、ここでは秀吉の命による水攻めに、内心では異議を唱えながらも実直に遂行する人物として描かれているのである。

常山御前の鶴姫は地元では知られた存在のようだが、毛利やら小早川やら宇喜多やら中国地方の諸将の勢力争いの経緯には疎いために全く知らなかった。これはゆきの方も同じで、こういう一般的にはあまり知られていない人物は史料に頼ることが出来ないため、生かすも殺すも作者の腕一つということになろうか。
by odin2099 | 2010-11-01 21:15 | | Trackback | Comments(0)
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