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【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

2019年 10月 01日 ( 1 )

e0033570_22114704.jpg沛国は敵対する炎国に領土の一部である境州を奪われたものの、今は同盟関係を結んでいる。だが兵たちは領土奪還を念願とし、対して王である沛良は同盟を守ることに固執していた。
そんな折、兵からの信頼も厚い都督・子虞は単身で炎国の将軍・楊蒼と手合わせを申し入れていた。その勝手な行動に激怒した沛良は子虞の職を解き、事を穏便に済ませるべく妹の青萍を楊蒼の息子・楊平に嫁がせ両国の結びつきを強化しようと画策する。
だがその子虞は実は影武者だったのだ。かつて楊蒼との戦いで受けた傷が元で病に倒れた子虞は、影武者を使って世間の目を欺き、密かに境州奪還の計略を練っていた。自由と引き換えに影武者は子虞、そしてその妻の小艾から楊蒼を倒す必殺の剣を学ぶのだったが…。

「グレートウォール」というよりは「HERO/英雄」「LOVERS」路線に近いチャン・イーモウ監督の古装片で、「三国志」のエピソードが元ネタになっているとのこと。
極力色を排した白黒映画のような画面はあたかも水墨画のようだし、竹のような強靭なしなやかさを持つ傘(”アンブレラソード”と呼ぶらしい)を使っての殺陣は斬新で、相変わらずアクションを含めて美しい画面を作る才は認めるのだが、肝心のお話は今ひとつ。

王は凡庸で暗愚、自意識だけが肥大化した典型的な二代目気質なのだが、対する都督も皆に慕われる文武両道の英雄という評判と裏腹に陰険な策謀家でどっちもどっち。
そして幼い頃に拾われた恩義を感じているという影武者は、何故そこまで都督に従順で忠誠を誓っているのだろうと不思議に思うほど。

まあこれは後半になって奥方である小艾への思慕故であることが明らかになり、死を覚悟した出撃の前夜に遂に二人は結ばれるのだが、それを予期していた子虞は二人の行為を覗き見しているという変態ぶりを発揮。それまでは曲がりなりにも仲睦まじい夫婦であっただろうが、それを知った後では一気に小艾の気持ちも醒めたかも。
これならば敵対する楊蒼、楊平親子の方がよほど英雄らしいし、青萍のじゃじゃ馬の跳ねっ帰り娘っぷりが一服の清涼剤のように感じられる。

劇中には再三「太陰太極図」が出てくるが、これは都督とその影武者だけでなく、都督と王、都督と楊将軍、あるいは都督と奥方、影武者と奥方など様々な人物を現しているのだろう。
しかしせっかく都督とその影武者をダン・チャオが一人二役で演じながら、そのあまりの変貌ぶりに二人が瓜二つには一度も見えなかったのは誤算だったのではないか。そして奥方を実生活ではダン・チャオ夫人であるスン・リーが演じているのも何やら下世話な興味をかきたてられるのみだ。



by odin2099 | 2019-10-01 22:15 |  映画感想<サ行> | Trackback(2) | Comments(2)
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