
そう遠くない未来。
波留間群島初島に国籍不明の武装集団が上陸し、島を占領した。海上自衛隊は直ちに第5護衛隊群を現場海域へと向かわせる。その旗艦は、事実上戦後初となる空母<いぶき>。計画段階から憲法違反であると糾弾され続けた曰く付きの艦だった。
<いぶき>艦長は空自のエースパイロットから海自へ転じ、最年少で昇格した秋津竜太。それを補佐する副長は、秋津の防大の同期で共にトップを争った海自生え抜きの新波歳也。二人の考え方は大きく隔たっていた。
そんな思惑を他所に、<いぶき>は容赦なく敵潜水艦からの攻撃を受け、追い打ちをかけるように敵艦隊が出現。自衛隊は初の戦死者を出してしまう。
政府は遂に戦後初の「防衛出動」を発令、緊張の度合いは更に高まっていく。
かわぐちかいじの人気漫画を脚本:伊藤和典、長谷川康夫、監督:若松節朗で映画化。
出演は西島秀俊、佐々木蔵之介、藤竜也、玉木宏、高嶋政宏、佐藤浩市、本田翼、斉藤由貴、中井貴一、小倉久寛ら。
12月23日未明から24日早朝まで、クリスマスを控えた緊迫の一日を迫力あるタッチで描いている。

企画には何故か
福井晴敏が噛んでいて、原作を大きく改変(改悪?)してるとのこと。
と聞いて期間限定のお試しセット(?)で原作漫画を急遽3巻まで読んでみたのだが、お話も登場人物もまるで別モノ。映画は数年前に建国された架空の国が相手だが、原作はなんと中国による日本に対する侵略戦争を描いている!
また映画じゃ大騒ぎしてる割に、日本が各国に働きかけた結果、国連軍が乗り出してくるとあっさりと腰砕けでメデタシメデタシだが、原作漫画はそんな単純な結末は迎えそうにない。かわぐちかいじは”監修”としてもクレジットされているが、よくこれでOK出したものだ。
原作にはいないジャーナリストを<いぶき>に乗艦させ、本心を明かさない主人公の内面をフォローさせたり、とある街のコンビニエンスストアのドタバタを挿んで、事件と直接関係ない一般人視点も忘れてないぞとばかりにアピールしてみても、緩急をつけるというよりかえってテンポを悪くしているようで、その舞台装置が上手く機能していない。
福井晴敏の仕事ぶりも「機動戦士ガンダムUC」は評価したのだが、他のCGアニメ版「キャプテンハーロック」や「宇宙戦艦ヤマト2202/愛の戦士たち」、それに「機動戦士ガンダムNT」と、ここのところ自分の中では株価大暴落中。
他に携わっている公開待機中の作品群への不安は益々募るばかりだ。
ポリティカル・サスペンスやクーデター物、架空戦記物は好物なので、原作漫画に目を瞑れば途中まで(時間切れで無理矢理収束を計ったかのような結末以外)は愉しめなくもないのだが、日本映画もここまでか、という残念な思いの方が強い。
【ひとりごと】
「沈黙の艦隊」もそうだったが何を考えてるかわからない主人公を抱いたドラマというのは見ていて辛い。
そしてあのコンビニ店長、見ていて実にイラっとした。あんなブラックな職場はご免だな。