
ボンドガールはイザベル・スコルプコ。
一見すると清楚で大人しそうなイメージがあるが、実は男勝りの行動派。
序盤から物語上の真の主人公として活躍し、ボンドと出会ってからはパートナーとして行動を共にする。
歴代ボンドガールと比べても物語上の重要度はかなり高く、後半は実質的にバディ物と言っても良いくらいだ。
もう一人のボンドガールと呼ぶべきなのはファムケ・ヤンセン。
もっとも彼女はボンドを相当痛めつける悪役で、これまでのシリーズキャラクターではグレース・ジョーンズが演じたメイディに近い。
あるいはかのジョーズことリチャード・キールに匹敵する存在感、と言ったら言い過ぎか。
24~5だったイザベルに比べると、ファムケはおそらく30歳前後。
後年の「X-MEN」シリーズでは些かキツいかなと思う場面もあったが、この頃は奇麗だし色っぽい。
もう一人ボンドと絡むのが、マネーペニー役のサマンサ・ボンド。
ボンドとキスシーンがあるマネーペニーというのは彼女だけかな。
この作品の悪役<ヤヌス>の目的が、結局のところアレックス自身の個人的な復讐に根差している、というのが今一つ分かりづらい。
序盤でコサックの歴史が語られる場面があり、それが伏線の一つなのだろうが、さらっと語られるだけなので注意しておかないと気が付かないかも。
そしてこのアレックスがいわゆるラスボスであり、かつボンドのかつての親友で互角に亘りあえるライバルキャラというのが、作品全体を軽くしてしまっているようにも感じる。
ライバルキャラは別にいて、ラスボスはラスボスらしくどっしりと構えていたならばもう少し厚みが出たようにも思えるのだが。
【ひとりごと】
エリック・セラを音楽担当に起用したのは人選ミスだろう。
<過去記事>
https://odin2099.exblog.jp/4729869/
諜報部員のカルバートは捜査に乗り出すが、その最中に謎の大富豪スクーラスから豪華船へ招待を受ける。
船内にはスクーラスの仲間やその美貌の妻シャーロットがいたが、その夫婦の余所余所しい態度にカルバートは不振を抱く。
なおも捜査を続けるカルバートは核心に迫ってゆくのだが、その一方で仲間を次々と失ってゆく。

最初はカルバートと親友のバディ物かと思わせるのだが、中盤で相棒はあっけない最期を遂げ、今度はそりの合わない嫌みな上司が現場に出張ってくる。
ただカルバートに対して始終不満をぶつけているものの、一方ではその実力を認めているからこそ、危険を冒して自ら前線に出てくるわけだから結構イイ人だったりするのである。
アンソニー・ホプキンスは当時30代前半。今からはちょっと想像もつかないくらい体を張ってアクションをこなしている。
俊敏な身のこなしとはいえないものの、ショーン・コネリーもロジャー・ムーアも決してスマートなアクションを披露していたわけではないからこんなものだろう。
ナタリー・ドロンはお色気担当だが、あまりサービスショットはない、残念。
役どころも最初から思わせぶりで怪しさ全開、そしてやっぱり怪しかったという意味では凡庸だが、キャラクターの相関関係という点ではやや捻りが加えられている。
丁度「007」が過渡期だった(コネリーからジョージ・レイゼンビー、更にコネリーへと交代が相次いだ)ので、製作陣は対抗してシリーズ化を目論んでいたようだが、お話そのものは地味だし、アクションシークエンスもさほど派手ではなく、またアンソニー・ホプキンスも娯楽作品で主役を張るタイプでもないので、製作陣が期待したほどの数字は上げられずに頓挫した。
四半世紀ほど前に一度見ているのだが、全くと言ってよいほど記憶に残っていない。
ただ邦題は格好良い。
これまでのシリーズでは一番暗くて重たい話で、ボンドは任務ではなく親友の仇を討つべく私闘に走る。
そのせいかボンドと対する悪役も世界征服を企むようなスケールの大きい相手ではなく、ボンド個人の復讐を満たす程度の小物。その分リアリティのある相手とは言える。
ボンドのお相手を務める美女は二人。
前半から満遍なく出番があるのは麻薬王の愛人ルペで、演じているのはタリサ・ソト。
ボンドに惹かれ、寝返って協力者となるパターンだが、途中で裏切者として始末されることなくラストシーンを迎える。
初登場シーンからベッドに男を連れ込んでいて、後にボンドともベッドを共にするなど全裸シーンが何度かあるものの、肝心の部分は全く見せないガードぶり。

ボンドとはキスシーンどまりなのでヌードはないが、途中で露出度の高い水着姿を披露。
更にその後はノーブラでシャツを羽織っているので、終始胸元の突起が目立つという思わぬサービスショットの連発も。
麻薬王サンチェスの手下ダリオを演じているのはデビュー間もない頃のベニチオ・デル・トロだが、今と違って痩身で、ちょっとブラッド・ピット風の二枚目。
ただ、どことなく危険な香りを漂わせるギラギラした目つきは、この時から変わらない。
この作品以降、シリーズは長い中断期間を迎えてしまった為、規約を残しながらもダルトンはシリーズを去ることになる。
<過去記事>
長らく”女王陛下のスパイ”を務めたロジャー・ムーアに代わり、ティモシー・ダルトンが4代目を襲名。
ダンディで渋い”大人なボンド”で、パッと見はムーアより年上に感じるほど落ち着いた物腰だ。
甘いマスクで余裕綽々なムーア=ボンドも良いのだが、眼光鋭く危険な香りを漂わせるダルトン=ボンドも捨てがたい。

マネーペニーを除くとボンドと絡む賑やかし的な女性もいないため(フェリックス・ライターの部下のCIAの女性エージェントがチラッと出てくるだけ)、彼女の存在感は際立っているし、グラマラスなボディでセクシーさを売りにしているのではない、清純派の知的な美女という役どころも異彩を放っている。
従妹のオリヴィア・ダボ共々気になる存在だ。
このシリーズ、今回はずっとBlu-ray搭載の新録吹替版で楽しんでいるのだが、ティモシー・ダルトンに大塚芳忠というのは微妙。
ジョージ・レイゼンビーに小杉十郎太というのも違和感ありありだったが(勿論ショーン・コネリーは若山弦蔵、ロジャー・ムーアは広川太一郎である)、そういやダルトンの吹替ってFIXがいなかったっけ。
「007」に限定しても他に小川真司、鈴置洋孝、津嘉山正種、田中秀幸、山寺宏一、谷口節が演じているようで、いずれも決定打に欠けるようだ。
<過去記事>
3代目ボンドとして活躍してきたロジャー・ムーアは7本目となるこの作品をもって降板。
今後この連投記録を更新するボンド役者は出てくるだろうか。

こちらは広川太一郎が亡くなる一年半か二年くらい前の収録かと思うが、色々と残念だ。
ムーア期のボンド作品としてはかなり冗漫な印象を受けるが、悪役となるクリストファー・ウォーケンの狂人っぷりは素晴らしいし、その愛人兼ボディガード役のグレイス・ジョーンズなどキャラクターも立っている。
またボンドガールのタニヤ・ロバーツやボンドの協力者を演じたパトリック・マクニーなど出演者の豪華さも、これまでのシリーズでは随一かもしれない。
ただタニヤ・ロバーツは意外に出番が少なく、序盤に出たあとは後半まで活躍しない。
代わってチョイ役ながら印象的なのが、KGBのスパイであるポーラ・イワノヴァを演じたフィオナ・フラートン。
ボンドとは旧知の間柄で、ボンドと組み合った際にウエットスーツの上半身が脱げて白いノーブラのシャツ姿を披露したかと思うと、その後は仲良く日本風(?)の浴槽に浸かるというセクシー担当。
<過去記事>
https://odin2099.exblog.jp/4645085/

レン・デイトンの「ベルリンの葬送」を映画化した、「国際諜報局」に続く<ハリー・パーマー>シリーズの2作目。
主演は前作に引き続きマイケル・ケインで、上司にあたるロス大佐役のガイ・ドールマンは続投。
監督はシドニー・J・フューリーから、<007>シリーズを手掛けたガイ・ハミルトンへ交代。
二転三転どころかしょっちゅうひっくり返るどんでん返しの連続。
面白いは面白いのだけれども、とにかく思わせぶりな登場人物がやたらと多く、そのほぼ全員が裏の顔を持っていて互いに化かし合いをするというお話なので、舞台は西と東を行ったり来たりだし、途中で誰が何をしたいのかがわからなくなってきた。
権利関係のゴタゴタの末に作られた「サンダーボール作戦」のリメイク版である。
といっても厳密には映画「サンダーボール作戦」のリメイクではなく、そのオリジナル脚本に基づく二度目の映画化、ということになるようで真にややこしい。
しかも主人公のボンド役が、既に本家シリーズを降板している元祖ボンド俳優のショーン・コネリーだから尚更である。

大御所のミシェル・ルグランを引っ張ってきたのは良いとしても、この手の作品に相応しい人材だったかは別問題。
これ、クライマックスシーンに「ジェームズ・ボンドのテーマ」を流すだけでもかなり印象は違ったはずだ。
久々のボンド役のショーン・コネリーは流石の貫禄。これで本家のロジャー・ムーアより3歳年下とはとても思えない。
でもコネリーもムーアも随分年齢が行ってからボンド役を降板したと思ってたけど、コネリーはこの作品の製作時に52~3、ムーアは勇退作「美しき獲物たち」の時が57~8なので意外に若い。
最近じゃ現在57歳のトム・クルーズが<ミッション:インポッシブル>シリーズの新作を2本用意してるし、クルーズより10歳上のリーアム・ニーソンもまだまだアクション頑張ってるんだから凄いものだ。
で、コネリーのボンドも良いのだけれども、二人のボンドガールが本家以上のお色気を振りまいている。
悪女役のバーバラ・カレラは終始セクシーな衣装に身を包み、周囲の男たちを手玉に取ろうとしているし、対するキム・ベイシンガーは一見すると清純で可憐なヒロインに見えるも、スケスケのレオタード姿で闊歩したり、下着姿で海へドボンと落とされ殆ど全裸と変わらない艶やかな肢体を披露したりで、これまたボンドをはじめ皆を悩殺するのだ。
<過去記事>

元々はTV映画だそうだが、他国では劇場公開されたくらいだからそれなりのクオリティー。
助演がパトリック・スチュワートとクリストファー・リーだから、そんなに”安い”映画ではないはずだ。
お話も1時間半という中で、内部に裏切者パターンやタイムサスペンスを盛り込むなど色々と工夫はされているので、「007」並みの超大作を期待しなければ楽しめる作品だろう。
しかしこの作品、吹替の出来はちょっと酷い。
もちろんベテランを起用している部分は良いのだが、主役は棒読み台詞で萎えるし(TV放映版は大塚明夫で、機内版は神谷明らしいのに…)、字幕と比べると固有名詞やら軍隊の階級やらがかなり違っていてモヤモヤするし、もうちょっと何とかならなかったのかなあと残念でならない。
<過去記事>

