いよいよ大団円である。
フェーズ3の、そして<インフィニテイ・サーガ>そのものの最終作は次作「スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム」だが、そちらはフェーズ4への伏線並びにカーテンコールの趣きが強い。
物語としては本作で見事な締めくくりがなされている。
涙あり、笑いありの娯楽大作。
メインストーリーだけでなく数々のサブプロットを内包した作品でありながら、散漫な印象も舌足らずな印象も受けない。
そして、観客が「見たい」と思っている場面をきちんと見せてくれている。
不満が全くないとは言わないが、驚嘆すべき出来栄えと言って良いだろう。

その差はどこにあるのだろう。
おそらくは高所大所から、個々の作品だけでなく全体の流れをきっちりと把握した上で、ストーリーをしっかりと構築した舵取り役の存在の有無から来ているのだと思う。
<マーベル・シネマティック・ユニバース>も必ずしも全てが予定通り、順調な歩みだったわけではなく数々の障害があったことは伝えられているが、例えば監督交代劇にしてもそれがネガティヴに作用してしまった<スター・ウォーズ・ユニバース>と違い、アクシデントが結果的にポジティヴに作用したのは優れたリーダーがいたからだ。
<インフィティ・サーガ>の23作品を、最初からリアルタイムで全ての作品を追うことが出来たのは望外の喜びであった。
しかしコロナ禍の影響でフェーズ4は出だしから躓いてしまった。
開巻作品である「ブラック・ウィドウ」は度重なる公開延期で、現在は劇場公開されるかも不透明で、配信に切り替えるとの噂もある。
その煽りを食って「エターナルズ」以降の劇場作品も全て公開延期となり、同じく現時点ではいつ見られるかは定かではない。
そして劇場作品と連動する形で予定されているDisney+での配信ドラマだが、こちらも撮影スケジュールに遅れが生じ、また劇場作品とのリンクの影響もあってどうなるかは予断を許さない。
またここへきて、ブラックパンサーことティ・チャラ役を務めていたチャドウィック・ボーズマンの予期せぬ早すぎる死。
今が<MCU>最大の危機といっても過言ではないだろう。
だがこの製作陣ならば、必ずや何らかの解決方法を見つけ、この困難を克服するに違いない。
それをただただ期待するのみだ。

それにしても新型コロナウィルスの蔓延が一年早くなくて安堵している。
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来るべき「エンドゲーム」へ向けて、いよいよ役者は揃った。
物語は90年代半ば。
まだフューリーはシールドの一介の捜査官に過ぎず、コールソンは新人。
そういや「アイアンマン」の時に略称募集中なんてことを言ってた割に、この頃から普通に「シールドの捜査官だ」と名乗ってるし、それで通用するところを見ると認知されてるようなんだが、ヘンなの。

そして物語のラストで、スクラル人の新たな安住の地を求めて宇宙に旅立ったキャプテン・マーベル=キャロル・ダンヴァースが戻ってくるのは20年以上経ってから。
そのキャプテン・マーベル、<MCU>では初の本格的な女性ヒーローで、身体にピッチリとフィットしたコスチューム(キャプテン・アメリカほどじゃないけど、こちらも星条旗デザイン)に身を包んで入るものの、露出も全くないのでいわゆるセクシャルなイメージはまるでない。
一方でキャロルの仲間で後に敵対することになるスターフォースのメンバーの一人ミン・エルヴァは、昔ながらのセクシー悪女系の魅力を持っていてちょっと気になる。
最初は「善=クリー」「悪=スクラル」と思わせておいて途中で善悪をひっくり返して見せるのだが、既に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」で悪いクリー人が出ているので(ちなみにその人は今回も出てきてる)「おやおや?」と思わせるのはシリーズ物、ユニバース物の強みと言うか妙味かも。
逆に初見の人にはややこしくてわかりづらいかもしれないが、どうやら今後の<MCU>においてスクラル人は大きな存在になりそうなので、今のうちにチェックしておいた方が良さそう。

死んでないし、キャラがキャラだけに再登場の可能性があるが、実は森川智之は既に他の<MCU>作品で重要なキャラを演じている。
最初は「インクレディブル・ハルク」のMr.ブルーことサミュエル・スターンズ(演:ティム・ブレイク・ネルソン)、続いて「アイアンマン2」のジャスティン・ハマー(演:サム・ロックウェル)、そして「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」と「ブラック・パンサー」の2作品でマーティン・フリーマン扮するエヴェレット・ロス。

ソコヴィア協定違反者の内、スティーブ・ロジャースとナターシャ・ロマノフ、サム・ウィルソン、ワンダ・マキシモフは逃亡者の道を選び(それにヴィジョンが同行し)、家庭のあるスコットとクリント・バートンは司法取引をして軟禁状態にある、ということらしい。
間もなくその期間も終わり晴れて釈放、という段階でスコットはハンク・ピム博士とホープ・ヴァン・ダインに連れ出され、新たな事件に巻き込まれる。

スケールの大きな「アベンジャーズ」の後に、箸休め的な小品として機能するのがこの「アントマン」シリーズらしい。
ただそのラストは「アベンジャーズ/インフニティ・ウォー」の展開を踏まえたもの。
最後には「アントマンとワスプは帰ってくる」とのテロップに「?」マークが付け加えられているが、アベンジャーズの逆転劇の鍵はスコットが握っていた。

だがソーとハルクは敗れ、ロキとヘイムダルは惨殺されるという波乱の幕開け。
続いてハルクはストレンジと出会い、ストレンジはアイアンマンにコンタクトを取り、そこにスパイダーマンも参入してサノス軍との戦いになるが、舞台は宇宙へ。
その宇宙ではガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(スターロード、ガモーラ、ロケット、グルート、オラックス、マンティス)がソーを救出し、また新たな絆が生まれる。ソーはロケット、グルートと行動を共にすることになり、ガーディアンズは二手に分かれる。

これほどワクワクさせ、そしてこれほど絶望感を味合わせる結末を持ったヒーロー映画は過去に例がないのではないか。
「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でデビューしたブラックパンサーの単独主演作。

この世界では同時期に様々な場所で色々な事件が起きている。
それらをパズルを解き明かすように検証していくのもまた楽し。
物語は言ってみればワカンダの内政問題。
極めて閉鎖的なお話だ。
その一方で世界規模、地球規模の事件も起きて、それらを同列に並べても何の違和感もなく、また一体感を感じさせてくれるのが<MCU>の凄さだろう。
そしてウルトロンの事件以来、表向きは世界規模の大事件は起きていないが(ジモの起こしたテロはあるが)、実はその裏ではサノスが着々と己の野望を実現させんと動いているということを、例え知らなくてもこの作品は楽しめるのだが、もし知っていれば一層味わい深いものになる、という構造も大したものである。

「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」以降ご無沙汰だったソーとハルクの近況報告。
そしてまだデビューから日が浅いドクター・ストレンジがソーと初邂逅。

既にソーやロキを手玉に取るとは、短期間でストレンジも急成長を遂げたものだ。
序盤でオーディンもウォーリアス・スリーも退場してしまうし、その後はアスガルドの民も次々と犠牲になり、ソーも片目を喪うという悲惨な、凄絶なシーンが続くのだが、映画全体を貫く明るいトーンは最後まで保たれているという稀有な作品。
ラストシーンも、地球を目前にしたソーたちの前にサノスの宇宙船が立ちふさがるという絶望的な状況なのにも関わらず、だ。
それはやはりソーとロキ、あるいはソーとハルク(バナー)との漫才コンビのやり取りが秀逸で、これに悲惨な過去を持ちながらも逞しく生き残ってるヴァルキリーが加わっての化学反応が愉しいからだろう。

次に登場するのは「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の冒頭だが、その時もハルクの姿だったが、その間に一度も戻れなかったのだろうか。
「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で再デビューを飾ったスパイダーマンを主人公にした物語。
と同時にこれは「アイアンマン」の物語でもある。
「ロッキー」シリーズが完結したあと、ロッキー・バルボアの物語が「クリード」シリーズに引き継がれたように、この作品でも”ある決断”をしたトニー・スタークの”その後”が描かれる。
いわば形を変えた「アイアンマン4」と言っても良いかもしれない。
と同時に、先々の展開に色々なものを投げかけた作品にもなっている。

そのソニーとディズニーの話し合いの結果マーベルスタジオはソニーのために「スパイダーマン」の映画を作ること、その代わりに<MCU>世界にスパイダーマンを登場させることで合意し、「シビル・ウォー」でのお披露目を経て、ソニー映画でありながら<MCU>でもあるこの作品が誕生した。
その一方でソニーは単独で<SUMC(Sony`S Universe Of Marvel Characters)>を展開。
これは簡単にいえば「スパイダーマンのいないスパイダーマン世界」を舞台にしたソニー独自のユニバースで、その第一弾となる「ヴェノム」がスマッシュヒット、その続編も準備中だ。
ソニーとしてはゆくゆくはヴェノムをスパイダーマンと共演させたい意向があるのだが、今のところ<MCU>と<SUMC>は別の世界。単純にコラボさせるというわけにはいかなかった。
ところが「スパイダーマン」映画の2作目を作ったところで両社は決別。スパイダーマンの権利はソニーに戻り、<MCU>からスパイダーマンは去ることになってしまう。
そこへ割って入ったのがピーター・パーカー役のトム・ホランド。
双方のトップに直談判し、どうにかこうにか決裂という最悪の事態は回避され、「スパイダーマンは複数のシネマティック・ユニバースを行き来できる唯一のヒーローだ」と発表されるに至る。
結果的にスパイダーマンは<MCU>と<SUMC>、どちらにも登場できるようになったのである。
「ヴェノム」に続く<SUMC>の第2弾は「モービウス」。
その予告編には本作のヴィラン、ヴァルチャーと思しき人物が登場してくる。
ならば「モービウス」は<MCU>と世界観を共有しているのか、それとも似た姿の別人なのか。
既に<MCU>と<SUMC>は融合しているのか、謎は残る。
また「スパイダーマン」映画の2作目「スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム」には「スパイダーマンの天敵」とでもいうべきJ・ジョナ・ジェイムソンが登場しているのだが、演じているJ・K・シモンズはトビー・マグワイヤが主演した「スパイダーマン」三部作でも同役を演じている。
それだけでなくトビー・マグワイヤ自身にも、また続く「アメイジング・スパイダーマン」二部作で主演したアンドリュー・ガーフィールドにも再演の噂が出てきた。
アニメ作品「スパイダーマン:スパイダー・バース」は異なる世界のスパイダーマンが一堂に会する物語だったが、実写作品でもトム・ホランド版のスパイダーマンが複数のユニバースを行き来するだけでなく、異なるユニバースから別のスパイダーマンが合流するという同じ動きがあるのだろうか。
何やらマーベルスタジオ=ディズニーに合流を果たしたX-MENにも似たような動きがあり、単に<MCU>内でX-MENをリブートさせるのではなく、20世紀FOX版X-MENのユニバースとも合流する可能性が囁かれている。

その鍵は”親愛なる隣人”スパイダーマンが握っているのかも。
この作品が公開された頃は、まさかそこまでユニバースが拡張するなんてことは考えも及ばなかったのだが。

しかしその父親はとんでもないヤツで…。
ということでピーターにとって大切な”家族”とは、母を死なせ自分を利用しようとしてる”本当の”父親なのか、それとも固い絆で結ばれたガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(とラヴェジャーズ)の”仲間たち”なのかを問いかける作品に。



劇中では「アベンジャーズ」の名前こそ出てくるものの、前述の通り違う世界のお話のように感じたわけだが、ポストクレジット・シーンではソーが登場。
神話の世界の神々と魔法使いとの親和性は高く、ここで違和感は減少。
「ドクター・ストレンジ」という作品の独自性は少々損なうことにはなっているが、やはり<MCU>世界の一本であることを強調し、来るべき本格的共演に期待を繋ぐことを優先、それは間違ってはいないと思う。
現在は「ストレンジ」単独の2作目が準備中で、スカーレット・ウィッチが登場するなど他の<MCU>作品との関わりが強くなることが予想されるが、本作のヒロインであるクリスティーンや、ストレンジの頼れる兄貴分からどうやらヴィランに転向するであろうモルドたちの再登場にも期待したい。
<過去記事>
https://odin2099.exblog.jp/25251374/
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https://odin2099.exblog.jp/27105201/
https://odin2099.exblog.jp/28027231/
「アイアンマン」を皮切りに多くのヒーローたちがデビューし、時には衝突もありながらも彼らは”アベンジャーズ”という一つのチームとしてまとまりを見せてきたが、それもこれまで。

これが来るべきサノス侵攻を防げなかった最大の要因であり、また二人が和解し協力し合うことがサノス撃退の鍵となったことを考えれば、この<インフィニティ・サーガ>はスティーブ・ロジャースとトニー・スタークという二人の男が、出会い、反発しながらも協力し、やがて決裂、が最後には友情を取り戻す、という物語だったとも言えるだろう。
それに先立つ何本かの作品で、ヒーローたちの後ろ盾となる<シールド>という組織やニック・フューリーという後見人を排除し、死んだと思われたスティーブのかつての親友の謎、見え隠れするスティーブとトニーの考え方の相違を小出しにしておく用意周到さ、伏線の巧みな張り方。
一作一作は独立していながらも、大きな<マーベル・シネマティック・ユニバース>という枠組みの中で破綻させない舵取り役の有能さに脱帽せざるを得ない。

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